投稿再開?気の向くままに
2018年、孤独なインド駐在にふと書き始めたブログを長らく放置していました。
書き始めたときは、独りでインド国内を旅行したときの話などもブログに書き留めようと思ってましたが。。。
2019年初夏に帰国して、既に一年半が経ちました。考えていたことは書き留めておかないとやっぱり忘れてしまうなあと思い、再開することにしました。
手始めに、投稿した記事を少しは読みやすくなるよう、書き換えてみました。これから、色んな事を書き留める場として使ってみます。
インドで"SE"?SIerって日本特有じゃないの?
インドでSEはじめました
私の役割は、BA(Business Analysist)とPM (Project Maneger)であり、会社から与えられている役割は”SE"ではありませんでした。
それなのに、なぜ”SE"を名乗っているのか、海外企業の現実を説明しつつ、その背景を述べていきます。
SIerは日本特有か?
SIerは日本特有の文化、といういわれ方をすることは多いです。しかし、実際には、日本ほどSIerが有名ではないにしろ、海外でもSIerはいます。
ここで、SIerの定義とは何でしょう。
直感的に要約するのであれば、
・ITベンダー(事業を実行しているユーザ企業でない)
・受託開発(自社サービスでない)
くらいを満たしていると、SIerといえるのではないでしょうか。
この基準でいくと、私が勤めているインドの会社は、
・ITベンダー
・ASPサービスプロバイダー
であるので、SIerではありません。しかし、勤務の実態はほぼSIerでした。その理由を説明していきます。
自社サービスでも勤務実態はSIer
私の会社は、基幹系の金融システムを作っていました。
金融は、国ごとに規制やルールが異なりますが、共通している部分も少なからずあります。
我々のシステムの発想は、Web系(フロント)は国ごとに大きくカスタマイズする必要があるが、バックエンドで動くシステムであれば、大部分をすべての国で活用できるはずだ、というものでした。
実際、この発想は当たって、多少は国ごとのカスタマイズをしましたが、8カ国に導入実績を作ることができました。
しかし、導入した国の中でシェアを伸ばしてけませんでした。
なぜシェアは伸びなかったのか?
原因1.すでにレガシーなシステム(デファクトスタンダード)が市場に存在する
我が社のシステムはレガシーなシステムに比べて多くの利点を持っていました。
しかし、積極的に乗換えをしようというユーザはほとんどあらわれませんでした。
もし仮に長期的視座をもって我が社のシステムに乗り換えてくれれば、間違いなくコストカット効果が出たでしょうが、長期利用に対しては、別のマイナス要因があり、それが原因2でした。
原因2.ブロックチェーンやクラウド等の破壊的な仕組が登場したことで、企業は投資に慎重になっている
ブロックチェーンは金融の仕組みそのものを大きく変えかねない技術でした。多くの企業は、まだ、その投資には慎重です。しかし、同時に、いざというときの資金確保は考えていました。結果として、長期的な視座が必要な投資には非常に消極的になっていたのです。つまり、長期的には、そもそも仕組自体が変わるかもしれないので、ちまちまとしたコストカットは効果的ではなかったわけです。
誰がシステムを使ってくれるのか?
システムを導入してくれたユーザは、
・新たにビジネスをはじめたスタートアップ
・レガシーなシステムを長期間使っていたが、耐え切れなくなったユーザ
でした。
また、導入ユーザの特徴として、
ITリテラシーが高い人間・業務に精通している人間が少ない
という実情がありました。
スタートアップは技術力があるはず、というのは早計で、中にはベンダーに頼りきりのスタートアップ企業もあります。
SIer化するASPベンダー
ASPは多くのユーザを抱えることで、チャリンチャリンと運用益で儲ける仕組みです。利用ユーザ数が少ないと、赤字を垂れ流すはめになります。
それを回避するために何をするでしょうか?個社向けのカスタマイズ(SI)です。
上述したように、ユーザにはIT知識や業務知識が十分にありませんでした。ITや業務リテラシーが低いユーザ企業の代わりに、要件定義から運用までを一括で請け負う日本SIerとの類似はこの点にありました。
しかし、ここで、我々の戦略があだとなりました。我々は金融の専門家ではありますが、その国の専門家ではなかったのです。結果、国の制度や実情に即した効果的な提案が打てず、ITや業務知識の少ないユーザ企業の要望に従わざるを得ませんでした。具体的には、UI改善などを中心としたユーザビリティの改善です。
やめていく若者たち
そもそもがBtoB向けのバックエンドシステムですから、ユーザが要望してくるユーザビリティのちょっとした改善をしても、先進的な技術知識や、マーケット特有の業務知識は手に入りません。
新しい知識が得られる領域がないと将来有望な若手は早々に愛想をつかして、会社から出て行ってしまいます。新規市場に導入しているときは楽しくても、エンハンスに移行していく中でメンバが離れていってしまうようなことが起きていました。若手に根性がない、人が足りないと嘆く日本SIerとなんとなく似ていませんか?
インドでSEはじめました
私の会社がSIerに近いことは理解してもらえたでしょうか。日本だけ、と悲観することはありません!SIerの悲劇は海外でも起きています。悲しいかな。。。
インド人は気が利かない?ジョブセキュリティ意識って?
インド人に対する日本人のイメージ
インドと仕事をしたことがある日本人から下記のような話をよく聞きます。
・インド人は言うことを聞かないでしょう
・言われたことの半分もやってくれないですよね
・インド人は痒いところに手が届かないんですよね
インド人にマイペースな人が多いのは確かですが、それ以上に仕事文化の差異が大きいです。その差異は、インドと日本に留まらず、東アジアとその他の国、といったほうが正しいように感じます。
ジョブセキュリティと”気が利く”の関係性
ジョブセキュリティという言葉があります
終身雇用の日本にはない感覚ですが、自分にしかできない仕事や作業を確保することで、自らの雇用を継続してもらえるようにすること、雇用を守ろうとする意識のことを指します。
転じて、人の仕事を奪ってはいけない、という感覚もあります。勝手に人の分まで仕事をやる、ということは、その人の仕事を奪いかねない行為、と考えているいうことですね。
日本人は、他人の分まで仕事をしてあげることを、”気遣い”とみなします。気を利かせてやっておきましたよ、という奴ですね。
中国やタイなどの東アジアも同じ傾向に感じますが、仕事を頼んだら、その関連する部分まで”気を遣って”対応してくれることを無意識に期待しています。そして、意識的にしろ無意識的にしろ、それが、仕事ができるかどうか、優秀かどうか、の尺度としても使われています。
しかし、逆に世界では、仕事を勝手にやる、ということが、”気遣いができていない行為”であると考えたことはありますでしょうか?
インドではカースト制度が根強く残っており、個々人の自分の仕事の責任範囲が強い傾向にあります。
よかれと思ってごみ拾いをして軽蔑された日本人工場経営者、という逸話はインドで働く者にとってはとても有名です。
インド人と仕事をした際に、期待通りの仕事をしてもらえなかった経験がある人は、多いと思います。
指示を出した後に、きちんと仕事の責任範囲が理解されているか、細かく言えばToDoやタスクが理解をされているか、確認したでしょうか。
もし、相手の理解が自分の期待通りでなかったならば、指摘すると同時に、正式にその人の仕事の範囲として指示を出してあげなければ、何度仕事をやり直してもらったとしても期待する成果は出てこないことでしょう。
それでも仕事が期待通りではなかったら。。。
それもまたインドです笑
インドで”SE”?エンジニアじゃなくて?
本ブログの方向性
2014年からSIer企業に就職し、2017年から2019年半ばまでインドIT企業で働いていました。また、中国やタイの会社と協業して働くことも多く経験してきました。
インドのIT企業、と言うと、
・バンガロールでエンジニアをやっているんですか?
・プネーのスタートアップですか?
などと聞かれることが多いです。
しかし、私は残念ながら(?)、いわゆる日本人が想像する”システムエンジニア(SE)”をやっています。場所も日本人割合が0.00...1%にも満たないような片田舎。
日本では、インドITに対する誤解も少なからずあるなあ、と感じます。変に神格化されていたり、下に見すぎていたり。。。
このブログでは、
日本人が海外×ITで働くこと
その他もろもろ
を書いて行けたらと思っています。
どうぞご照覧ください。